―――漆黒の闇の中、一人の青年と一人の長身の女性が佇んていた。
だが、両者とも明らかにどこか異質な雰囲気を放っていた。
「は……。ははは！！いいぜ！実にクールだぜ！！
まさかこれほどになるなんてなぁ！！」
爛々とした瞳でそう叫ぶのは一人の青年、雨生龍之介。
そして、もう一人の女性は、明らかに
アサシンとして召喚された反英霊メデューサ。
……だが、今の彼女は、もはや怪物であるゴルゴンに変貌する一歩手前だった。
ハー、ハーと俯きながらただ息をするメデューサの全身は、完全に蛇の鱗に覆われている。
腕のみならず体全体、美しい顔も全て残らずである。
そして、その魔眼は完全に理性を失い、膨大な魔力を蓄えながら爛々と光り輝いていた。
―――ゴルゴンの怪物。
今のメデューサは度重なる魂喰らいによって怪物へと零落しかかっている。
アサシンとして召喚された彼女は元々怪物としての属性が強かったが、
それが龍之介の手による魂喰らいにより、完全に怪物へと変貌する一歩手前になったのである。
偶然マスターなしに道端に倒れているこのアサシンを拾えたのは、
龍之介にとって幸運だった。
アサシンから様々な情報を仕入れた彼は、自分の楽しみのついでに魂喰らいをさせて
アサシンを強化させていった。
その結果、最早アサシンはここまで零落してしまったのである。
「はははは！実にクールだぜぇ！！さあ、もっとやろう！もっとどんどん魂ってやつを食らわそう！ははは！ははははは！」
龍之介のその哄笑に、その美しい顔まで全て鱗が覆われたアサシンはただハーハーと荒い息をつくだけだった。
「―――はっ！！」
一度倒されたはずのウェイバーは、はっと再び目を覚ました。
そこは以前と全く同じ双子館。以前と全く同じ状況だ。
なるほど。これが仮想現実だとしたら、ゲーム的に例えるのならば自分はまたスタート地点に戻ったという事なのだろう。
つまりはコンティニューというわけだ。
ルートをクリアしてラストを迎えないかぎり、この状況は何度でも続くのだろう。
うんざりとするウェイバーだが、そんな事も言っていられない。
「……さて、これからは慎重に事を運ばなくてはな。」
一息ついて落ち着いたウェイバーは冷静に現状の分析に入る。
とりあえず、あのキャスターの警告は正しいと言ってよかった。
この状況では、何がどうなるか全く予想がつかない。
そうなれば、今まで以上に慎重に動き、情報を分析する事が必要だ。
衛宮と遠坂がああいう状態であった以上、接触は慎重に行わなければならない。
もう一度同じ事を繰り返すのはごめんだ。
だが、ウェイバーと同じく大聖杯を知り、それに熟知しているキャスターは、
傍観の構えを取っている。
あの状態ではこちらの話は聞いてくれまい。
間桐は……例外だ。となると、他のマスターやサーヴァントと接触を図り、
地道に情報収集を行なっていくほかない。
とりあえず、ランサーにウェイバーは今の自分の置かれている状況を大体簡単に説明する。
「と、こちらはこんな所だな。ランサー、そちらは何かあるか？」
そのウェイバーの問いかけに、ランサーは答える。
「は、多少気になる点が。」
「まず奇妙な事なのですが……どうやら今現在この冬木には『七体以上のサーヴァント』が存在している気配が。
そのせいか、俺自身も含め、恐らくは他のサーヴァントの力もそれぞれ弱体化していると思われます。」
その言葉にウェイバーは頷く。
七騎以上のサーヴァントが存在している地点で異常といえるが、
この世界の真実の一端を知っているウェイバーにとっては驚くに値しない。
「なるほど……。恐らくは第四次と第五次が入り混じった結果だな……。
神秘は分配されれば当然力が落ちる。
七騎以上のサーヴァントが存在する事により、力がそれぞれに分配されてしまって弱体化してしまったんだろう。」
いかに聖杯の魔力が膨大と言っても、そのパワーソースには限界がある。
一つのものが二つに別れればその分力が分割されるのも当然。
これは魔術における基本原理でもある。
七騎以上のサーヴァントが存在するなら、聖杯も力をそれぞれに分けなければならず、当然それぞれの力は弱体化する。
お互いが弱体化し合うのなら、戦力的に考えればあまり代わりはないはずである。
「さて、それじゃ外に出てみるか。」
とりあえず外に出て情報収集を試みなければならない。
昼間ならば、真っ正直に戦いを挑んでくるサーヴァントやマスターはいないはず。
昼間の間に何らかの情報が得られればよし、だ。
ただ、キャスターのいうように慎重に動かなければならない。
ましてや、七体以上のサーヴァントが存在する現状では何が起こるか分からない。
ウェイバーは、ランサーを霊体化させて冬木市へと出かけていった。
「……特に変わりはなし、か。」
昼間の冬木市をうろうろしているウェイバーはそう呟いた。
色々調べては見ているが、いまのところ大した異変は見当たらない。
だが、夜間に何が起こるか分からない以上、昼間に調べられるだけ調べておくのは常識的な判断と言える。
だが、予想外の事態というのはいつでも起こる。
それはこの時でも例外ではなかった。
「ふうん、こそこそしてると思ったら……。
どこの魔術師だか知らないけど、この冬木のセカンド・オーナーである私に顔通しもしないなんていい度胸じゃない。」
「………！！」
調べているのに集中しすぎていたのか、偶然にもこの冬木のセカンド・オーナーである遠坂凛と鉢合わせしまったのだ。
だが、今の彼女は、あの完全に冷徹な魔女と化していた彼女とは全くイメージが異なる。
現実で出会った遠坂凛そのものだ。
……となると、恐らくあの魔女と化した彼女は、父である時臣が生きている可能性の時の彼女に違いない。
と、なれば以前の彼らの姿は、可能性の一つ、という事が考えられる。
時臣が生存し、その教えを受け続け冷徹な魔女となった凛。
切嗣の教えを受け、切嗣のコピーとなった士郎。
それらの可能性が以前出てきた彼らなのだろう。
しかしそうなってくると話はまた変わってくる。
もし万が一まだ初日に戻っても、何らかの可能性の形に変化する事が十分考えられる。
そして、それは到底予測できるものではない。
ここに来て、ウェイバーはキャスターの「慎重に動くように」という忠告を身にしみて理解した。
「……これは失礼。僕は、エル……いえ、ウェイバー・ベルベットといいます。」
しかも、この彼女は、エルメロイ二世としての彼も、ウェイバーとしての彼も知らないようだ。
これが聖杯による再現世界なら、それも不思議ではないだろう。
「……。ふん。まあいいわ。
アンタみたいなへっぽこ魔術師じゃあんな真似を出来るほど度胸ないだろうし。」
どうも彼女はかなりイライラしているようだ。
彼女からしてみれば初対面であるウェイバーに対して、猫の皮を被ろうとしない。
普段であれば、初対面の人間に対しては優雅で丁寧に猫の皮を被って対応する彼女がそれをしないという事は、
よほど厄介な事になっているに違いない、とウェイバーは推測した。
はあ、と彼女は溜息をつくと早々と話を切り上げに入る。
「……ま、いいわ。
アンタも変なことはしない事。
ただでさえこっちは時計塔に出す書類仕事と厄介事で大変だっていうのに。」
「厄介事とは？」
「……魂喰らいよ。
どこの馬鹿か知らないけれど、サーヴァントに一般人の魂を食わせている奴がいるの。
しかも神秘の隠匿なんて欠片も考えていないバカがね。
私は冬木のセカンド・オーナーである以上、それを放置するわけにはいかない。」
それを聞いて、ウェイバーは明らかに以前の冷酷な魔女であった彼女とは違う、と確信した。
冷酷な魔女と化した彼女なら、絶対にそんな事は言わないはずだ。
「ま、アンタもせいぜい気をつける事ね。
何せ、この魂喰らいをしているヤツは後先考えていない。一晩で数十人なんてどうかしているわ。
おまけに証拠隠滅は完璧ときている。厄介ね全く……。
それに、それによって強化されたサーヴァントを考えると頭痛いわ……。
ま、とにかく気をつけなさい。それじゃ。」
その言葉を最後に、彼女は立ち去っていった。
彼女の言葉に、何故かウェイバーは胸騒ぎを抑える事は出来なかった。
その後、早く帰って夜間は動かない方が良さそうだ、と判断した彼は、双子館へと急いで帰宅しようとする。
だが、運の悪い事に、すでに夕暮れを過ぎ、夜へと突入する所だったのである。
「へえ、あれが敵マスターとサーヴァントってやつかい？」
そして、さらに運の悪い事に、噂をすれば影と言わんばかりに、その噂の本人がウェイバーを捕捉していたことである。
「まあいいさ。ここまでになったお前をご披露するいい機会だ。
最初の獲物はあいつらさ。さあ、クールにやろうぜ！！」
双子館すぐそばの森の中、双子館へと急いでいたウェイバーたちの元に一つの影がウェイバーに向かって襲いかかる。
「主よ！お下がりください！！」
木の上から真下にいるウェイバーに対しての奇襲は、実体化したランサーによって防がれた。
いかにアサシンの気配遮断と言えど、攻撃する瞬間にはランクが大きく落ちる。
その隙に防ぐ事ができるとは、流石に戦闘に長けた英霊である。
「なっ！アサシンだと！？」
木の上から落ちてきて奇襲をかけたのは、以前の戦いでウェイバーと戦ったアサシンだ。
だが、地面から降り立ったアサシンの姿を見て、ウェイバーは目を見張った。
体中の隅から隅まで鱗に覆われているその禍々しい姿。そして爛々と赤く輝くその魔眼。
あれは明らかに英霊ではない。どこからどう見ても怪物だ。
凛の言っていた魂喰らいについての情報がウェイバーの脳裏をよぎる。
そして、森の中から一人の青年が現れてアサシンに声をかける。
雨生龍之介。
今はアサシンのマスターである青年である。
「さあ、やっちまえ！アサシン！！クールに行こうぜぇええ！！」
瞬間、アサシンの肉体が崩れ始めた。
美しかった肉体は脈打ち、凄まじい勢いで膨張して巨大な肉塊へと変貌していく。
「おおおオオオォooooOOOOOOOO！！！」
巨大な肉塊と表面に生えた無数の蛇。
そして中心にある巨大な単眼の石化の魔眼。
そこから放たれる膨大な魔力は全てから生命力を奪い取り、全てを石化させていった。
ゴルゴンの怪物を制御するなど通常の魔術師では不可能だ。
おまけに膨大な魔力を常に供給しなければならない。
だが、今まで何十回もの魂喰らいを続けてきた事で、いまのゴルゴンには膨大な魔力の備蓄がある。
これならば、魔力は問題ないだろう。
もっとも、全く制御できないゴルゴンがその魔力をすべて消費すれば、
次は龍之介の魔力を使用するしかない。
そうなれば、龍之介はあっという間に破滅。
そしてマスターを失ったゴルゴンも消滅するだろうが、魔術の知識のない龍之介がそこまで考えを及ぼす事はできない。
「くそっ！またゴルゴンの怪物と戦う事になるとは……！！」
この状況を打破するためには、やはり一番てっとり早いのはマスター狙いだ。
ランサー単騎では、ゴルゴンの怪物と対抗するのは難しい。
その点、あのマスターは素人以下だ。見たところ、魔術的防御手段も持ち合わせていない。
あのマスターを排除すれば、ゴルゴンを止めるのも容易になるはず。
だが、それを本能的に、読み取ったのか、ゴルゴンは彼らの前に立ちふさがる。
その強烈な石化の魔眼により、ランサーに重圧がかかり、ウェイバーの足元から徐々に石化が開始される。
他者封印・鮮血神殿(ブラッドフォート・アンドロメダ）』により、周囲はすでに深紅の結界が構築されつつある。
ウェイバーはもちろん、マスターであるはずの龍之介ですら魔力を奪われつつある。
「くっ……！！このままでは！！」
一気にゴルゴンの霊核を狙おうにも、表面の無数の蛇がそれを迎撃に入る。
このままでは、ウェイバーが完全に石化してしまう。そうなれば終わりだ。
対魔力Bを誇るランサーならともかく、普通以下のウェイバーでは到底石化の魔眼も耐えられようはずがない。
と、そんな中いきなりゴルゴンの動きががくんと鈍くなる。
それと同時に、石化の魔眼の力も、他者封印・鮮血神殿（ブラッドフォート・アンドロメダ）の力も衰える。
まるで、何らかの力により『重圧』をかけられたかのようである。
「やれやれですね。まさか零落しきった『自分自身』と戦う事になるとは。」
その言葉と共に、飛び出してきたのは、先ほど見たゴルゴンに変貌する前のメデューサ。
いや、その容貌は大きく異なる。
ゴルゴンに変貌する前の彼女は、全身を鱗に覆われ、爛々としていた魔眼もハイザーに覆われている。
「なっ……！！メデューサが二体だと！！」
いや、資料で読んだことがある。
あれは恐らく、第五次聖杯戦争のライダーとして召喚されたメデューサだ。
本来、同一存在が同じ時間軸に存在していると矛盾が発生する。
そして、その矛盾を解消するべく、世界からの修正が起こる。
だが、今の英霊としてのメデューサと怪物化したゴルゴンでは最早同一存在とは言えない。
「それは正確ではありません。ランサーのマスター。
今の私はライダーのクラスとして現界しているメデューサ。
そしてあちらはアサシンとして現界したのですが、魂喰らいの影響でゴルゴン化してしまったメデューサです。」
どうやら、少なくとも今の段階ではこちらに敵意はないらしい。
そう、彼女の敵意は、自分自身であるはずのゴルゴンへと向けられている。
少なくとも今はこちらに攻撃を仕掛けてくる様子のないライダー：メデューサに向けてウェイバーは問いかける。
「だが、いいのか？
言うなれば自分自身と戦う事になるんだぞ？」
「……ランサーのマスター。貴方は、自分自身に腹を立てた事はありますか？」
そう言いながらも、ライダー：メデューサはゴルゴンをきっと睨みつける。
ギシギシと釘剣を持つ手を握り締める音が聞こえる。
そう、最終的にメデューサの姉を食らったのは、目の前にいるゴルゴン……堕ち切った自分自身だ。
それはある意味自業自得そのものだ。
だがだからこそ、彼女はそうなってしまった自分自身を強く憎んでいるのである。
「ええ、これは八つ当たりです。
自分自身の暗黒面に対して八つ当たりができるのです。
これほどの機会など、滅多にありはしないのですから―――！！」
そう言いながら、ライダー：メデューサはランサー：ディルムッドと共に攻撃を仕掛ける。
通常、同存在が同じ時間軸に存在する事はできない。
だが、反英霊とはいえ、英霊であるメデューサと完全に怪物として堕落しきったゴルゴンでは、
元が同一存在とはいえあまりに違いすぎる。
怪物となりきったゴルゴンと、英霊であるメデューサとなら、元が同一存在といえど同じ時空軸に存在できるのである。
ランサーの魔槍とライダーの釘剣の見事な連携攻撃。
だが、それも無意味だ。
ゴルゴンの凄まじい再生能力により、ランサーの必滅の黄薔薇以外の攻撃は全て再生していく。
ライダーとランサーの対魔力の高さにより、石化はまぬがれているが、それでも重圧は防ぎようはない。
ならば、こちらも目には目を持って対抗するしかない、とライダー：メデューサは判断した。
「まさか堕ち切った自分自身に魔眼をかけることになるとは……！！」
そう言いながら、ライダー：メデューサはハイザーを外し、ゴルゴンに向け魔眼キュベレイを発動させる。
「くっ……！！」
「G……GAAAAAAAAAAAA！！」
ぶつかり合う石化の魔眼キュベレイ。
その二つは全く同一ではあるが、その出力はやはり怪物化したゴルゴンの方が桁違いである。
このままではこちらが石化されかねない。
こうなったらペルレフォーンで一気にケリをつけてしまうしかない。
そう判断したライダー：メデューサだが、そんな彼女の耳に一つの声が響きわたる。
『―――我が骨子は捻じれ狂う』
「―――！！」
その瞬間、膨大な魔力と共に、何かが凄まじい勢いでこちらに接近するのをライダー：メデューサは感知し、
無意識のうちに、回避行動を取る。
そのすぐ脇を、空間をねじ切りながら『何か』が音速を突破しながら猛烈な勢いで通り過ぎる。
―――それは、一本の『剣』、否、『矢』だった。
柄こそあるが、刀身はまるでドリルのように捻くれた一本の剣。
だが、斬り合いに使用できず、刺突にしか使用できないような剣が普通の剣であろうはずがない。
発射された方をちらりと見ると、遥か遠くに、普段は纏っている赤い外套を抜き捨てて、
弓を構え、にやりと笑うアーチャー：エミヤの姿が存在した。
アーチャーが放った偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)は、
空間をねじ切りながら、凄まじい勢いでゴルゴンの怪物の魔眼キュベレイの中央に刺さり、貫通する。
「GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA！！！」
魔眼を潰されたゴルゴンは、周囲に体液をまき散らしながらのたうち回る。
自らの巨大な魔眼の中心部に偽・螺旋剣(カラドボルグⅡ)で貫かれたのだ。その痛みは凄まじい物だろう。
「なっ！、ゴ、ゴルゴ……！！」
そして次の瞬間、飛来したアーチャー：エミヤの第２矢によって龍之介の頭部が吹き飛ばされた。
今まではゴルゴンが邪魔してマスターである龍之介に攻撃できなかったのだが、
そんな事は長距離攻撃ができるアーチャーには関係がない。
ディルムッドの投げ槍による遠距離攻撃もできただろうが、もし万が一ゴルゴンに邪魔されてしまった場合、
攻撃手段の一つが失われてしまう。
それを恐れて、今までランサーは投げ槍による攻撃を行わなかったのである。
だが、マスターがいなくなって自然消滅するであろうゴルゴンではあるが、大人しく待っていたらどれほどの被害が出るか分からない。
故に、ここで仕留める、とウェイバーは判断した。
「今だ！！ランサー！！」
「了解ッ！！」
その瞬間、ランサーが大地を蹴った。
そのまま、ゴルゴンの肉体を足場にしながらゴルゴンへと駆け上る。
「これで終わりだ！ゴルゴン！！」
そして、ランサーの必滅の黄薔薇（ゲイ・ボウ）がゴルゴンの霊核を貫く。
ゴルゴンに止めを刺したハルペーは、屈折延命という効果を所有しており、
この剣でつけられた傷は、自然ならざる回復・復元ができなくなる。
それはランサーの必滅の黄薔薇と似たような効果だ。
ならば、ゴルゴンの止めを刺すのはランサーが最も適任だと考えたウェイバーの思考は正しいと言えた。
だが、破壊力の宝具を持たないランサーがどうやってゴルゴンに大ダメージを与えて足止めするかそれが悩みところだったのだ。
ライダー：メデューサの魔眼の重圧による足止めと、アーチャー：エミヤの螺旋剣による遠距離射撃による大ダメージによって、
ようやくその好機が訪れたのである。
魔眼を潰され、必滅の黄薔薇によって霊核を貫かれたゴルゴンは、なすすべもなく消滅していく。
―――これが、ゴルゴンの最後だった。
……戦いが終わった後、すでにライダー：メデューサもアーチャーも姿を消していた。
あのアーチャーについては凛からの魔術協会に提出した聖杯戦争の報告書を読んでも、
結局正体不明という記述しかなかったアーチャーだ。
（凛はセカンドオーナーの義務として、魔術協会に聖杯戦争の顛末の報告をしているが、
エミヤについての記述は、士郎の固有結界の暴露を恐れてわざと曖昧な記述にしていたのである。）
ゴルゴン戦でアーチャー；？？？が放った異型のカラドボルグを見て、ランサーは訝しげに呟く。
「あれは、まさかカラドボルグ？いや、形状が違いすぎる。あれは……？」
流石に同じケルト系列の英霊。
一目で偉大なる英霊、フェルクスが所有した宝具カラドボルグである事を見抜いたのだ。
だが、その形状は伝え聞くその形とはあまりに異なる。
宝具があそこまで形を変貌させるとは普通は考えにくい。
おまけに伝え聞くまっとうな剣の形ではなく、あんな捻くれた螺旋状の剣、否、『矢』として機能するカラドボルグなど聞いた事もない。
その彼らの疑問は、解かれる事なく夜の闇へと消えていった。
こんにちわ。零です。
読んでいただいてありがとうございます。
この作品では、原作のホロウでは、サーヴァントは七つのクラスに縛られていましたが、
この作品では原作の第五次とフェイト・マイナスの英霊を両方出す予定です。
第四次の英霊だけでは面白くないし、話も膨らまないので、というのが大きな理由です。
ホロウ世界でもアヴェンジャーがいる影響でバサカがハブられていましたが、大目に見ていただけるとありがたいです。
よろしければ感想などいただけるととても嬉しいです。
なお、これらの小説は全てフィクションであり
実在の人物、団体、法人、国家、宗教等とは一切関係有りません。
また登場する人物は全て１８歳以上です。
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