Fate嘘予告《英雄王の帰還》



―――セイバーを失い、それでもなお聖杯戦争に立ち向う士郎。
だが、その前に立ち塞がる、『この世全ての悪(アンリ・マユ)』と同化した間桐 桜。
最早絶体絶命の状態で、現れた存在とは―ー―。


ズリュと、形容しがたい音を立てて、クラゲのような『影』から一本の異様な物体が突き出される。
誰もが目を見張る。そこに存在するのは信じられないモノ。
それは、黄金の手甲を纏った人の『腕』であった

「………え?」

それと同時に、その腕の掌から一本の強靭な鎖が飛び出し、
硬い金属の音を立てながら、がっしりと衛宮亭の柱へと巻きつく。

「ま、まさか―――!」

《王の財宝(ゲート・オブ・バビロン)》

瞬間、影が内部から『破裂』した。
そこから飛び出してくるのは、無数の古今東西全ての武器武器武器。
そこに存在しない武器などありえない。何故なら、これは全ての宝具の『原型』だからだ。
その力をもってすればいかに強力といえど、たかが影など物の数ではない。

そして、破裂した影の残骸を纏わせて、そこに存在したのは―――。

「―――フン、どうやら『戻って』これたようだな。」

高慢な口調でそう言い放ったのは、黄金の鎧を纏った最古の英雄、ギルガメッシュその人だった。

「あ、貴方、どうして!」

驚愕に目を見開く黒化した桜に対して、ギルガメッシュは不敵な笑みを浮かべる。

「気安く喋り掛けるな、下種が。雑種の分際で、この我(オレ)を呑み込もうとしたその罪、我の手で思い知らせてくれる。」

「ああ、戯れに一つ教えておいてやろう。
貴様は知らぬであろうがな、この身は、前回の聖杯戦争によって受肉した身。
すなわち、貴様のその泥にも耐性があると言う事よ。
まあ、聖杯の内部は時間軸が狂っている故、すぐに戻ってこれたはずがこのようにズレが生じたがな。」


あの黒い影はサーヴァントの天敵だ。
純粋な英雄ならば近づいただけで取り込まれ、例え反英雄であろうとも太刀打ちはできない。
だが、そんな事は問題ではない。
彼は悠然と自らの『蔵』から異様な剣を取り出す。
それは強いて言えば、三つのパーツで構築されている柱だった。

「―――え?」

その三つ連なる円柱は互い違いにゆっくりと回転を開始する。 
そして、その回転は甲高い音を上げながら低速から高速へと移行し、風を巻き上げ、本来の力を発揮する。
吹き荒ぶ風、その剣ではない剣はその真の力を解放する。
闇の化身たる巨人が迫る。大空洞を覆いつくすほどの巨大な影。
それはゆっくりと矮小な獲物を飲み込もうと迫り来る。

「――――。」

……時間が止まる。逃れられない破滅を前にして思考が止まる。
だが、それは。
断じて『この世全ての悪』による物ではなかった。
収束していく風圧の断層。
それは、ただ強力な風ではない。
これは空間自体を切り裂く擬似的な空間断層を引き起こす。
その威力は、巨大なだけな影とは比べるべくもない。

彼の手にした剣は。
天地を引き裂いた最強の神剣である。


《天地乖離なす開闢の星(エヌマ・エリシュ)―――!!》


まるで紙を引き裂くがごとき容易さで、その剣は易々と黒き巨人を粉砕する。
その剣から噴出された風圧は、擬似的な時空断層と化して触れる存在全てを消滅させる。
これこそギルガメッシュが持つ最強の宝具、乖離剣・エアの力―――!

「そ、そんな!こんな――こんな事がありうるはずが・・・・・・。」

「戯け。貴様、英雄を何だと思っている?
英雄とは、人の身では決して敵わぬ強大な敵を打ち倒し、
定められた運命を覆し、決して有り得ぬ、起こり得ぬ事を引き起こしてこそ英雄と呼ばれるのだ。」

「その英雄の王たるこの我が、奇跡程度引き起こせなくてどうすると言うのだ―――!」

ありえないありえない絶対にありえない!
この目の前の存在は一体何!?
敢然と、そして悠然と歩み寄り、理不尽な力をさらに強大な理不尽で打ち破るこの存在は何!?

「貴方は―――何?」

呆然と、桜は呟いた。

「ならば教えてやろう。我は最古の英雄にしてウルクの王、
天の牡牛を打ち倒し者にしてこの世界の主。
……英雄王、ギルガメッシュ。」

「―――――!!」



 「ぬ、ぐ……!!」

乖離剣を持つ手を覆う手甲が軋みを上げる。
いかに天地乖離なす開闢の星とはいえ、一度に消し去れる影の数は纏めて数体。
ソレに対して、影はこの大空洞を埋め尽くさんばかりの数十以上。
ギルガメッシュは桜に奪われた後の残り少ない魔力を振り絞り、さらにエアを発動させる。

「ふふ、どうしましたか。英雄王さん。
いかに貴方が強力だといっても、一度天の杯(わたし)に取り込まれた以上ほとんど魔力は絞られているんです。
その魔力でどこまで出来るか、見せてみなさい……!!」

最早ギルガメッシュにはゲート・オブ・バビロンを開ける魔力すら残っていない。
彼に残されているのは最早乖離剣のみ。
それも彼に残された生命力を魔力へと変換してようやく起動させているにすぎない。
だが、それでも彼は屈せず、不敵で凄絶な笑みを浮かべる。

「我を―――。」

「―――舐めるな!雑種が!!」

さらに唸りを上げる乖離剣。吹き荒れる暴風暴風暴風。
そのあまりに風に耐え切れず、ギルガメッシュの纏う黄金の手甲のみならず、鎧全体ですら罅が入り、そして砕け散る。
上半身を裸にしながらも、さらにエアを振るう英雄王。
これは最早擬似的な空間断層などではない。
それは地獄。
かつて以前、天地を乖離なす以前、この世界は地獄そのものだった。
この剣はその地獄を再現する。
暴風の中心は無風などではなく、紛れもない奈落の穴。
この領域に踏み込んだ影たちは、落下するようにもと在た無へと戻っていく。
英雄王がかざす真実に、魔力で作られた影如きが耐えられようか。
数体ではなく、数十の影全てが一気に虚無へと帰る。
それだけではなく、大空洞自体が崩壊しかけているのだ。

「こんな―――こんなバカな……!こんなバカな事が……!
嘘、誰か嘘だと言って。お願い……!!」

「たわけ、巨大な力にはそれ相応の責任が発生する。
それを心得ぬ貴様に力を振るう資格はない。
この世の王たる我が、貴様にそれを知らしめてくれよう!!」



「―――さらばだ。エミヤ シロウ。いや、なかなかに楽しかったぞ。」

「なるほど。手に入らぬから美しい物もあれば、刹那だからこそ綺麗な物もある、か。」

「お前もそう思うだろう?なあ、エンギドゥ―――。」

――――冒険の日々も苦難の日々も、共に過した我が友よ、永遠なれ。
そんな言葉を心の中で呟きながら、英雄王は崩れ去る大空洞へと飲み込まれていった。
それが、この世全てを支配した王の最後の姿だった。


かなり以前、日記に連載したモノを引っ張り出してこちらへと持ってきました。
……しかし、某『From dusk till dawn 』のお方が紹介されているSSとほとんど同じ内容なんですよね。(´・ω・`)ショボーン 。
しばらく載せてみて、ダメでしたら消去します。
ちなみにBGMは約束された勝利の剣で。
ギル様が大活躍するルートがあってもいいじゃないかーと言う事がこれを書き出した発端でした。
あくまで妄想なので、本当に書き出すかは全く不明です。
……本気にしないでね。
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